逮捕されても示談ができれば前科がつかない?

逮捕されても示談ができれば前科がつかない?

刑事事件を起こして逮捕されると、それまでの生活は一変してしまいます。
取調室と留置場との往復の先には、刑事裁判が待っています。裁判で実刑となれば刑務所行きです。
ですが、まだチャンスは残っています。
被害者との間で「示談」が成立すれば、前科がつかなくて済む、または付くとしても刑務所に行かなくて済む可能性があります。
逮捕された際に、どう示談を成立させるか見ていきます。

刑事事件と示談の関係

刑事事件における司法機関の機能

  • 刑事事件を捜査する・・・警察(実働部隊)および検察(警察を指揮)
  • 刑事事件を起訴する・・・検察
  • 刑事裁判で求刑する・・・検察
  • 刑事裁判で有罪無罪と量刑を言い渡す・・・裁判官

司法機関の機能と示談の関係

  • 警察・検察・・・示談により捜査をやめることがある
  • 検察・・・示談により起訴をやめることがある
  • 裁判官・・・示談により執行猶予を言い渡すことがある

刑事事件の捜査を開始するのはもっぱら警察の、事件について起訴の有無を決定するのは検察専属の判断です。
起訴は、事件を刑事裁判に掛ける判断です。日本では起訴されると99%有罪という運用がなされています。

さて、起訴の有無、裁判での量刑を判断するにあたり、「加害者を厳しく処罰して欲しい」という被害者の意思は、重要な意味を持ちます。
逆に、被害者が処分を望まないという意思があるなら、起訴されないか、あるいは起訴されて有罪になっても執行猶予が付くなど、量刑に影響を与える可能性があります。
被害者に、処分を望まないと言ってもらうために交渉することが、つまり示談の中身です。
なお示談に向けて何もしない、できない場合であっても、必ず起訴されるわけではありません。微罪や証拠不十分によって不起訴になる場合もあります。

つまり「せっかく示談に向けて動いたのに、どのみち不起訴だった」という場合もあるのです。示談にはお金が掛かりますから、払い損に感じることもあるでしょう。
ですがこのようなケースでも示談は無意味ではありません。刑事事件化されなくてもその後、被害者から民事で損害賠償請求をされることもあるからです。
示談により、この心配がなくなります。

加害者になった以上、お金を惜しんではいけません。「刑務所に行けばいいだろ」と開き直ると、被害者への賠償も結果的に進まず、むしろ困った結果になるのです。

示談によって事件化・逮捕を防ぐ

示談にもいろいろあります。
本来の示談の意味に最も近いのは、「公権力によらずに解決する」ということです。
逮捕される前の段階においては、本来の意味の示談がもっともよく機能します。
公権力である警察が、捜査を始める前に解決すれば、事件にならないのです。

いっぽう示談が成立しなかった場合、被害者の意思に基づき警察に逮捕されることも、起訴されて刑事裁判に引き出されることもあるわけです。

逮捕後は示談によって釈放されることも

示談の必要性は、いきなりやってきます。
逮捕前に準備する人はあまりいません。

逮捕後、示談の成立により、自動的に釈放されるルールはありません。ですが被害者が処罰を望んでいない以上、検察も無理に裁判に持ち込む必要がないので、釈放される可能性は高くなります。
ただし逮捕による身柄拘束は逮捕から72時間以内なので、この間に示談を成立させて釈放されるケースというケースは、それほどありません。

加害者が逮捕されたことを、家族など身内が知っていて、速やかに弁護士に依頼して示談を成立させるという、特殊な場合にこうなります。

勾留されても示談によって不起訴になることも

逮捕から72時間後には、検察で勾留の決定がなされます。
多くの場合、勾留の決定が出され、引き続き身柄を拘束されます。
この期間中も、起訴前であれば示談の成立によって不起訴となり、釈放されることがあります。
不起訴なら前科は付きません。

逮捕中の示談成立に必要なものは

逮捕されてから示談を図る際、必要なものと行為を見てみましょう。

専門の弁護士

逮捕されている場合、加害者本人は動けません。
だからといって親族が示談交渉しようとしても、被害者側に会ってもらえないかもしれません。

示談交渉のために、刑事事件を専門にしている弁護士は必須といえます。

十分な示談金

示談は、被害者から処罰を望まない意思を引き出す行為です。ただというわけにはいきません。
十分な額の示談金を支払ったうえで、被害届を取り下げてもらう必要があります。

法外な要求でもあれば別ですが、被害者側に納得してもらえる額を支出することは求められます。
そしてこれは、民事訴訟の提起も防ぐ額である必要があります。

なにより大事な誠意

最後に大事なことです。
目的としては、刑務所に行かないため、前科を付けないための示談には違いありません。

ですがそれ以前に、明確な謝罪あってこその示談です。
「お金を出せば許される」わけではありません。加害者が自分自身で交渉にあたるわけではないものの、謝罪の意思を明確に表さないと、まとまるものもまとまらないでしょう。

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