刑事事件の示談成立にはどのような条件が必要?

刑事事件の示談成立にはどのような条件が必要?

刑事事件において、不起訴や執行猶予を導くための切り札が、示談を成立させることです。
示談によって前科がつかなくて済んだり、有罪だとしても減刑されたり、ということがあるのです。

本来犯罪加害者は、法律に基づき罪を問われるのが当然です。それを示談でひっくり返すのは、決して簡単なことではありません。
示談においてなにが必要なのか、その条件を確認していきましょう。

刑事事件で示談成立の条件を確認

ひとことで刑事事件の示談について言い切ると、次の通りです。

  • 被害者から「加害者について処罰を望まない」意思を引き出す代償として、加害者が謝罪を行い示談金を支払う

なんのため示談が必要なのかを考えると、条件面については答えが出てきます。

示談条件を、示談成立の目的から考える

刑事事件の示談成立のためには、害者と被害者の意思が次の点で一致することが求められます。

  • 加害者は有罪になりたくない(刑務所に行きたくない)
  • 被害者は、加害者を刑務所に送り込むことにそれほどメリットを感じない。
    それより、損害賠償してもらったほうがいい。

つまり示談の条件とは、次を満たすことです。

  • 加害者から被害者へ、合意を引き出す十分な示談金
  • 被害者から加害者に対する「犯罪事実を許す。処罰は望まない」という意思表明

示談とは、法律によらずに争いを決着することをいいます。
ところが刑事事件における検察等の司法機関は、公権力を有しています。
犯罪当事者が司法を無視して勝手にお互いけりをつけることは、本来できません。

ですが実質的には、これに近い形に持ち込むこともできるのです。
「近い」であり、イコールではないことは忘れないでください。

公権力の発動を示談により完全に押さえ込むことは不可能ですが、実質的にそうなる状態を、加害者側は目指すわけです。

条件として被害者の「処罰を望まない意思」

刑事裁判に向かう司法の一連の流れにおいて、示談の内容でもっとも重要な部分は「加害者を許します」という被害者の意思です。
これを、「宥恕付き示談」といいます。宥恕はゆうじょと読みます。
処罰を望まず、許すという被害者の意思を得るために、示談を成立させたいのです。

「処罰を望まない意思」を引き出すためには

示談の条件を満たすため、加害者側はどう動いたらよいでしょうか。
まず示談交渉に当たる人は、弁護士が適任です。
それも、刑事事件を多く手掛ける専門家が最適です。

加害者本人や家族が出ていっても、円滑な交渉は望めません。
被害者の心情を思えば当然です。

それに物理的な要因もあります。示談が必要な際、加害者本人は逮捕され、勾留されて留置場というケースが多く、動きたくても動けません。
交渉に当たるのは弁護士という中、加害者がなにをすべきかというと、明確な謝罪です。

勾留中でも謝罪文は書けます。気を付けたいのは、示談のための謝罪になっていると被害者には逆効果だということ。
犯罪加害者になった以上、責任転嫁することなく真摯に犯罪に向かい合い、謝罪すべきです。

そして、示談金を惜しまないこと。
被害者側から、万一法外な要求が出れば必ずしも従わなくていいのですが、それでも示談の成立は被害者次第であることを忘れないようにしなければなりません。
被害者の被害をお金に算定した上で、さらにプラスアルファが求められます。

示談が成立しないと、加害者は有罪になるだけでなく、民事上の損害賠償請求も別途提起される可能性があります。

示談書の作成

示談が成立しても、口頭だけではあとでひっくり返ってしまいかねません。
示談書の作成は必須で、そこに被害者の宥恕の意思も記載が求められます。

示談書は起訴前でも検察に提出しますし、起訴後であれば裁判に提出する重要な証拠となります。

示談をどうやって引き出せばいい?

被害者から、いかに示談の意思を引き出すか。
これについても見ておきましょう。

刑事事件に強い弁護士にゆだねること

示談において弁護士は必須です。相手と対立するのではなく、むしろその意も汲んで交渉をまとめあげることが求められます。
身内ではこうはできません。

お金を惜しまないこと

犯罪加害者になったときに備えてあらかじめお金を用意しておく人などいません。
加害者の立場としても、示談金の支払いは大変なことです。

ですが仕方ありません。それだけのことをしてしまったのです。示談金を惜しんではいけません。
お金がないのでまけてくれという交渉では、相手の許しは得られません。

お金が心配なときは、ついてくれる弁護士に相談しましょう。

謝罪の意思が不可欠

示談には、お金によって犯罪をなかったことにするという性質が、どうしてもあります。
だからといって、お金だけ払えばいいだろうというものではありません。

相手の許しを得るためには、お金よりもまず誠意を持った謝罪が必要であることを忘れないようにしましょう。

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